糖尿病と闘う(1)或る患者の場合
2008年4月1日のNHK 生活ホットモーニング で糖尿病を取り上げていました。
最初は軽い気持ちで番組を見ていましたが、これは他人事ではない、と気がつきました。
2回続けて糖尿病について紹介します。
糖尿病
血液の中のブドウ糖(血糖値)が増えて、血管にわるさをする病気。 普段は、血液の中のブドウ糖(血糖値)が高くなると、すい臓からインスリンが出てきて血糖値を下げます。 このインスリンの効きが悪かったり、出が悪かったりすると血糖値が下がらなくなります。
之を放置すると、脳卒中、網膜症、心筋梗塞、腎症(じんしょう)、神経障害(しびれや感覚を失う)、足壊疽(あしえそー足の先まで血液が行かなくなる)、等の合併症を伴います。
糖尿病は、21世紀の国民病と謂(い)われ、今、成人の6人に1人、およそ、1620万人が糖尿病、またはその予備軍といわれ、その数は増え続けています。
一度(ひとたび)糖尿病になると食事の制限や運動を続けるといった治療が必要になります。 しかし、治療を中断してしまう人も少なくありません。
宮城県仙台市の62歳の男性Aさんの場合。
43歳の時、勤め先の健康診断で、血糖値が高く、糖尿病と告げられました。
この時の血糖値は正常値(70-110)のおよそ2倍、209mg/dl、入院を奨められるほどの高い数値でした。 医師の指示で血糖値を下げる事になったものの、体に異常を感じていなかったAさんは事態を深刻に受け止めませんでした。
Aさん「何とも思わなかったというのが正直ですね。」
仕事も忙しかったAさん、当時は外食が殆どでしたが、先ず、食生活を改善する事にしました。 血糖値を下げる為、外食の回数を減らし、ビールも1杯まで。 好物の揚げ物もなるべく食べないようにしました。
努力の結果は間もなく現れました。 治療を始めて3ヶ月、血糖値は正常値の110 近くまで下がったと思ったAさんは、自覚症状が無かった為、安心する一方で治療を続ける気持ちを失ってしまいます。
Aさん「ただもう、自覚症状の無いのが一番の落とし穴ですね」
「体どうだった?
例えば軽くなったとかね。
そういうのは全然、何も無かった。
だったら、何でも良いじゃあない、何も体に支障が無いんだから、
痛くも痒(かゆ)くも無いんだから、いいじゃない。
ということで、もう、又、元に戻っていった。」
その後、Aさんは仕事の忙しさの中で、食事を制限する事を気にしなくなっていきます。 控えていたお酒や揚げ物を又、食べるようになって行きました。
一時は正常値近くまで下がった血糖値、しかしその半年後には、逆に治療を始めた時よりも高い値になってしまいました。 更に悪い事に病院にも行かなくなってしまいました。
当時通っていた病院は待ち時間が長く、仕事を半日休まなければなりませんでした。 そして診察をする医師からは血糖値を知らされるだけでした。
Aさん「注射を打つとか、何かの治療をするとかではないですから、数字だけなら、血取って、只見るだけなら、いいや、と考えて・・・それで(病院に行くのを)止めてしまったんですよね・・・」
糖尿病と診断されてから4年、Aさんは全ての治療を止めてしまいました。
ところがその翌年、思わぬ事態が起こりました。健康診断で右目の網膜(もうまく)に出血が見られると診断されたのです。 糖尿病の合併症でした。 眼科で検査したところ、目の血管が脆(もろ)くなり、網膜症になっていました。 放っておくと失明に繋がる恐れがある症状です。 この時はまだ症状が軽く、血糖値を下げるよう指示されただけでした。 しかし自覚症状の無かったAさんは、生活を変えませんでした。 その気になれば血糖値は直ぐに下げられると考えたのです。
Aさん「誰でもそうだろうけど、ああ、やれば出来るんだと思うと、あとはやんないですよねー
うんうん分かった、又、次回にやればいいや、という感じで・・・」
その後、視力は落ちていきましたが、Aさんは年のせいだと考え、治療をすることはありませんでした。 ところが58歳の時、これまでになく高くなった血糖値を指摘されます。 この時の血糖値は正常値の3倍、361。 直ぐに入院して目を検査したところ、失明寸前の状態になっていることが分かりました。
Aさん「もう、えーと思いましたね。 それで直るんですかという事を訊いたと思うんですけど、元には戻らないだろうと。 その時初めて糖尿病の恐ろしさというか・・・本も買いましたし・・・今更何をやってるんだという、あれですけど・・・」
その後、Aさんは4回にわたり、目の手術を行います。 その結果、何とか失明だけは免(まぬが)れましたが、障害は残りました。 激しい運動も出来ません。
Aさん「自覚症状が無いからって、放って置いたのが、まあ、今になってみれば、しっぺ返しというか、とんだ落とし穴みたいなところに入って行ったんじゃあないかと思いますね・・・」
専門家の話。
「糖尿病が見つかった時、9割の人は自覚症状がない。之が一番の落とし穴です。
7割の人が大した事ではないと考える。 Aさんの例は珍しくありません。」
治療中断の理由。
1. 糖尿病を軽く見た
2. 自覚症状が無い、又は、少ない。
3. いつでも直せるという誤った自信・安心感。
4. 忙しい中、治療・通院に余り意味がないと考えた。
糖尿病は、治療を続けるのが大変な病気です。 そんな中、治療を中断する患者をゼロにした病院があります。 長時間、マンツーマンで患者に対応し、治療を継続させるサポートを行っています。
そこで使われるのが「セルフチェック表」です。 1ヶ月に渡って、食事や運動を記入するものです。 項目は、歩数、体重、食事、目標等の欄があります。
患者は自分で目標を立て、出来たかどうか毎日、○△×で書き込みます。 最初の内は項目も少なくスタートし、段々増やしていきます。 その結果(チェック表を書くことで)、自己管理がしっかり出来るようになります。
出来た ○
半分出来た △
出来ない ×
Bさん(女性)が糖尿病と診断されたのは41歳の時、子育てをしながら飲食店で働いていたBさんはストレスからついつい、食べ過ぎていたといいます。 病院では血糖値を下げるように言われましたが、食事を制限したり、運動を続ける事が中々出来ませんでした。 そんなBさんが積極的に治療に取り組むようになったのは、5年前、今の病院で「セルフチェック表」を使った新しい取り組みが始まってからです。 始めの内は、達成率が僅かでしたが、続ける内に、達成率が70%を超えるようになりました。
Bさん今日は○だったとおもって○をつける時は嬉しいですね。 書くことで1日の反省も出来ます。
「セルフチェック表」をつけるようになって、Bさんは仲間に糖尿病のことを打ち明け、アリバイト先のおやつの時間も、今まで食べていたお菓子をやめ、代わりに果物を1個だけ食べるようになりました。
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