放浪記について:昭和36年の芸術座公演で肺炎になり代役を立てられそうになった時のことを森光子さんが振り返り「でも、一寸、偉(えら)そうなことを言わせて貰えれば、やってみやんさい!(笑)って言いたくなりますね。ていうのはやっぱり、菊田先生の演出、三木のり平先生の演出、以外に、自分の考えた事がいっぱい詰まっています。それは・・・(間を置いて)・・・出来るかしらって、ちょっと、傲慢(ごうまん)ですけど・・・そう思いますね。」(その2)
昭和36年の芸術座の東京凱旋公演の時、森さんは肺炎にかかり緊急入院するが、森さんの放浪記に賭ける思いが医師に伝わり、「この人は芝居を続けた方がいい」、と言わしめる。
そして、森さんは病院から劇場に通い続ける。
その時のことを振り返り、森光子さんは語る。
「代役という単語を聞いた時はぞっとしました。
えー、私の役を代役!で、その代役の候補者の名前まで聞えたんです。
これはどうしょうかと思いましたね。
そうしたら主治医の先生が “この人は、もしそういうことになったら、もっと悪くなりますよ。病状が” って仰(おっしゃ)って下さったんで助かりましたけど・・・役者の業(ごう)ですね・・・初めての主役でしょう。それですもの。
それは誰にも渡したくありませんもの。
候補の人の名前なんかが聞えてきたら、又、心が穏(おだ)やかじゃあないでしょうね・・・死んでも放(はな)さない!なんて言うかもしれません。」
そして冒頭の「一寸、偉(えら)そうなことを言わせて貰えれば、やってみやんさい!」に続くのである。
そしてこの放送から4年後の今年5月9日、東京・丸の内の帝国劇場で行われた昼公演で通算2千回を迎えた。
この日は森さんの89歳の誕生日でもあった。
初演は昭和36年。41歳の時である。
ちなみに、森光子さんの記録に次ぐのは。90年に記録した山本安英さん(故人)の「夕鶴」(1037回)である。
(森光子さん「放浪記」の項終わり
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